2.防寒、トイレ、避難所対策

【防寒について】 
①コツは
「発熱するのは自分のからだ。運動して代謝をよくして!」
「薄い洋服を重ね着して、空気の層を作る!」

発熱源は、服ではなく自分です。運動して代謝がよくなると、
よく発熱するので、服に頼らなくてもよくなります。
ダウンはとても暖かく、軽く、コンパクトになるので、冬山用の寝袋によく使われます。
発熱源である肌に近い部分で着たほうが、ふくらんで空気をたくわえ温 かくなります。
上着としてではなく、肌に近い部分で着るのがアウトドアの知恵です。
ダウンの上着は、雨に濡れるとダウンが縮んで、
全く温かくないことも知 恵として知っておいてください。
ダウンを肌の近くの中間着として着て、その上に防水、防風のものを着ると、
軽量の服で寒さ対策ができます。
軽いダウンウェアを部屋着やパジャマがわりにすると、
暖房費がかかりません。災害時そのまま外に出ても平気です。
 空気の層を上手につくることが、温かくなるコツです。
中間着として軽くて温かい服を上手に重ね着すると着膨れになりません。
着膨れすると動きにくいだけで なく、汗をかいてかえって冷えます。
アウトドアのウェアリングでは、インナー、中間着、アウターという概念が基本になります。

②敷くものやくるむもの
「下に敷く物は空気を通さないものがベター。段ボールなどが可」
「新聞一枚でも暖をとれる」
「シートでくるんで暖をとるときは、じっとすること」
銀色の「エマージェンシー(緊急事態)シート」などのアルミ蒸着シートは、
体温を熱源として、まわりの空気を閉じ込めるから温かくなります。
熱源は自分で す。ですので、覆ったらじっとしていないと温かくないのです。
ぱたぱたすると中の暖気が逃げてしまって一瞬にして冷えます。
また、もともと体温の高い子ど もをこれでくるむと、
熱中症になってしまう危険があります。空気も全く通さないから、口を覆うと窒息します。


③防寒に役立つ着かた
「下着に気を使う」
「コットンより吸乾拡散ポリエステルのほうが寒くない」
「ウールやシルクの下着は暖かい」
「防風に気を使って、上着はできればアウトドアレインウェアを」
冬山に入る人たちは、下着に一番気を使います。防寒の観点でいうと、
コットンは、保水性が高く、汗を吸ったら吸ったままになるという性質があります。
汗をかいたらすぐに着替えるのが正しいコットンの着方です。
アウトドアの人たちの下着には、ポリエステルが多いです。
普通のポリエステルは、ペターっとなって気持ちが悪いですけれど、
汗を吸ってすぐ乾く吸収拡散性のある特殊なポリエステルを着ます。
体温の高い子どもにはさほど必要ないですが、ポリエステル、
シルクよりも暖かいのがウールです。
ウールは、水分を吸収すると発熱する性質があります。
体温 より約二度以上あたためると暑すぎて、汗をかいてしまってからだが冷えます。
5本指の手袋よりミトンが温かいように、過酷な自然の中では、
隣の指の体温を 感じる方が温かい場合もあります。

シルクもおすすめです。
シルクはコットンと同じく保水しますが肌の水分量以上の水分は放出するので、
しっとりとしているけれど冷えない。タンパク質が肌の成分に近いため、
低アレルギー素材ともいわれています。
 寒さを防ぐために、次に大事なことは防風に気をつけることです。
風速1メートルの風が吹けば体感温度は1度下がります。
上着は必ず防風できるものにしま しょう。
フリースは部屋の中で着たり、防風のものと合せて使うとあたたかです。
でも、外で風にあたると、そのまま風を通します。

●トイレ
「自宅でも水が流れないことを想定して」
「ゴミ袋やペットボトルに生理ナプキンや新聞を入れて代用可」
「地面を掘って目隠ししてもいい」
「その場の状況で臨機応変に」
災害時に確保が難しくなるのが、トイレ。
地面を15センチ以上掘ると微生物が分解しやすいので、
まわりに土地がたくさんあって、人が少ないのであれば、
あとは目隠しさえできればということになります。
マンホールがトイレになる公園など、自治体が整備しているところもあります。

個人宅では、地震のあと、最初にトイレを使う時から流れないものと
想定しておかねばならないことが忘れられがちになります。
(正確には2回目から流れない ことが多いようです)
トイレに貼っておいてもいいかもしれません。
仕組みを真似してゴミ袋やペットボトルで作成したりできます。
2、3重にしたゴミ袋に紙オムツの内側の吸収体(ポリマーの部分)の部分を
破りとったものや生理用ナプキンを入れて便器にとりつけます。
尿と便を一緒にす ると臭いが強くなりますよね。わけて処理するとよいです。
紙オムツの吸収体のみ破るのは、外側は、防水になっているので、
オムツカバーとして何度か使える からです。
カバーの内側に生理用ナプキンをとりつけると、備蓄品が少なくてすみますし、
さらしや布を吸収体にもできます。カバーについては、レジ袋の両側 を切って、
オムツカバーにもできます。
その他、ペットボトルの上部3分の1をカットして、上部は逆さまにして下部にいれこみます。
そうすると、しびんみたいなものができますよね。
検尿の要領で 女子もできるということです。
たまったら、上部を元の形にもどして、
下部とジョイントした部分をガムテープなどで固定して、ふたをして捨てます。
ペットボトルしびんで導入して紙パックに汚物をいれて、ガムテープでとめることもできます。

もっとも、布オムツ、布ナプ、オムツなし育児で慣れていたら、
いつもそれはもういろいろ工夫していますから、その経験は、災害でも生きてきます。
トイレは 最も深刻になりやすので、念のためアイデアを詳しく書きましたが、
いまの皆さんの状態は、日本中探してもめったにいない、
うんちとおしっこのプロフェッ ショナルですよね(笑)。
自分が鍛えられていれば、アイデアはその場で浮かんでくるのではないかと思っています。


【備考:避難所について】
避難所は、情報や物資が集まる利点があるものの、
赤ちゃんや子どもには辛い場所です。
普段の生活でも、例えば、電車の中で赤ちゃんが泣くと白い目で見られ るように、
みながストレスを感じている避難所では、もっと辛いことになります。
おっぱいもあげにくいですし、子どもに危害を及ぼす人がいないとも限りませ ん。
自宅でいても、リストに記載したり、配給の時間に並ぶと、物資の支援が受けられます。
避難所に居づらくて車で寝泊まりする人も多くいますが、
車は体が伸ばしにくく、エコノミー症候群で亡くなられた方もいました。
それだけでなく、車はテント よりも寒いです。鉄なので、熱しやすく冷めやすい。
布団をそのまま外に持ち出して寝た方もいたそうですが、
夜露で、こどものおもらしよりも濡れた状態にな りひどく冷えます。
命にかかわりますから、絶対にやめてください。
通常は、自宅、テント、被害のない親戚や友人宅、
どうしようもない時には、避難所というイメージです。

東京近郊では地区災害時待避所協力農地といって、
災 害時、農地や空き地にテントを張ってよい場所があらかじめ決められています。
農産物も提供されます。

児童館、保育所は「避難所」ではないので開放されない ところもありましたが、
現在、開放されるという所が増えています。
 

☆参考:行政が発する避難情報
●避難準備…避難に時間がかかる赤ちゃん連れ、妊婦、お年寄り等が避難を始める段階
●避難勧告…すべての住民が避難を始めなければならない段階
●避難指示…すべての住民が避難を終わらせていないといけない段階で、建物内に残ることはできない