4.災害時だからこそ赤ちゃんのそばで

【日常の暮らしにあたりまえにあることが助けになる】

赤ちゃんを守るために「お母さん」を守って!

赤ちゃんのいる暮らしを考えると、おっぱいを飲んで、おむつをかえて……
災害時の赤ちゃんとの暮らしではおっぱいとおむつがいわばライフラインです。
水や物資の輸送がストップしてもそれだけは何とかしなくては……。


そこで助けになるのが、おっぱい育児とおむつなし育児かもしれません。
粉ミルクやお湯の調達、ほ乳瓶の消毒などの心配もなく、余震の恐怖、
慣れない不便な環境にあっても、ぐずったら即あげられるおっぱいに
助けられることも多いことでしょう。

たとえ量が出なくても、免疫物質は他では補えない大切なものです。
授乳中はお母さんからもα波が出ると言いますから、
与えるお母さんもつかの間の落ち着ける時間になるでしょう。

災害時のおっぱいと言えば、心配なのがショックや恐怖、不安、ストレス、疲れ、
空腹などの影響で、母乳が出にくくなるということ。
でも、しっかり休んで、何度も何度もあきらめずに吸ってもらっていれば、
また出るようになりますから心配いりません。

被災時の対応マニュアルには、出にくくなった時に備え、
粉ミルクと調乳用具の用意を呼びかけるものがありますが、
赤ちゃんを守るためにはそういった備品よりも、
母親を守ることを優先してほしいと思います。
なにしろ、妊婦と同様、授乳中の母親は二人分の命を預かっているのですから。

また、紙おむつの調達や布おむつの洗濯がかなわない時、
少しでもおむつなしで排泄できた分だけは、ライフラインの復旧を待てる自信になります。

もちろん、できる時だけでいいんです。持ち運び便利なおまるも役立ちそうですが、
外出時のおむつなし育児用に口の大きめのペットボトル(男の子おしっこ用)や
キムチなどの容器(女の子おしっこやうんち用)を使っている話も聞きますが、
これらはきっと災害時にも使えますね。

ちなみに、ロングスカートの中におまるを置いて、
親も用が足せたという報告もありますから参考まで。

中越地震の際は、わずか2~3日の間に、
幼い子を持つ家族の姿がほとんどの避難所から消えてしまったそうです。
自宅等行けるところがある場合はいいとして、
そこしか行ける場所がない母子が避難所でも安心して生活できることを祈ります。


そんな時こそぬくもりを伝え合って

おっぱい育児もおむつなし育児も、人が持っている身体機能を生かした子育て。
昔からあたりまえにされてきたシンプルな方法が、環境の整わない災害時にも
役立つんですね。そして、赤ちゃんだけでなく、母親もそのぬくもりに
包まれて幸せな気持ちになれるとみんな語ってくれます。

災害時には、不幸にも大切な人やモノを失うことも起こりますが、
そんな時、このぬくもりにどんなにか心慰められることでしょう。

生まれたばかりの赤ちゃんは、母が身にまとうように赤ちゃんと過ごすことで安心を得、
母子の絆は深まっていきます。おっぱいタイムもおむつなし育児もその一部。

子どもは成長とともに一定の距離を保っては離れ、また戻ってくることを繰り返しながら、
外の世界へ興味を広げていくわけですが、
災害時には、少し前の月齢や年齢に戻ったつもりで、おんぶや抱っこ、
時には添い寝で体を寄り添わせることを大切にしたいと思います。
再び子どもが安心して離れていけるようになるまで、
互いにぬくもりを伝えあうようにして乗り切りたいですね。


【お役立ち情報】

*離乳食:

少し大きくなった赤ちゃんのための離乳食ですが、私たちがふだんからお伝えしているように、
基本は親のものを取り分けることで大丈夫です。

塩分は必要なものですから、ごはんを中心に、少しずつ与え てあげましょう。
モノも何もない時は、昔ながらの噛んで与えるという方法も助けになるでしょう。
もちろん、母乳も一緒に与えてあげましょう。



*お絵かき:

大きな子たちには、用意できたらお絵かきや簡単な工作あそびをさせてあげましょう。
子どもたちなりの方法で、表現し、怖かったこと、つらかったことを吐き出していきます。


*わらべうた:

わらべうたのゆったりとした独特の雰囲気は、
つらくかさついた気持ちをおだやかにしてくれます。
ちいさな声で口ずさんでみましょう。


●おむつ替えの時に…

いちり にり さんり しりしりしり(しりしりしり、でお尻をくすぐる)

●抱っこした時に…

ここは かあちゃんにんどころ ここは とうちゃんにんどころ 
ここは ねえちゃんにんどころ だいどうだいどう

●おんぶした時に…

きょねんのややと ことしのややと くらべてみれば おんなじことよ まいとこまいとこ ばぁ






【被災地のみなさんへ】

呆然としてしまうような信じられない状況のなかですが、
子どもはいつのときも未来の勇気です。
抱きしめてぬくもりと勇気を分け合いながら、どうぞ生きていてください。
きょう生きて、明日生きて…私たち全国の母たちも、
何か応援できるその時までは、できることをしながら祈りたいと思います。



いとうえみこ/NPO法人自然育児友の会理事 

* この記事は、ナチュラルマザリングNo.4にて掲載予定の執筆の原稿に
本人が加筆訂正したものです。

【編集部より:あんどうりすさんからミルクの方へ】

「ミルクの方は、哺乳びんが消毒できない場合を想定して、
使い捨てできる小さな紙コップと使い捨てスプーンを用意しておいてくださいね。

サカザキ菌やサルモネラ菌などの感染防止として70度以上のお湯で溶かして冷まします。
ミルクを赤ちゃんの口に注ぎこむのではなく、コップに赤ちゃんの口をつけて、
赤ちゃんが自分で飲めるようにしてあげてください。2時間以上たったミルクは捨ててください。